dEUSのドキュメンタリー「Time is the state of my jeans」やっと見た!
一応メイキング・オブWorst Case Scenarioということになっているけど、実際にアルバムが作られた過程のことはほとんど触れてないというか。曲のこともあんまり触れてない(Hotelloungeのモチーフとかをさらっと言ってるくらい)
トムもステフもわりとさらっと酷い事を話すけど他のメンバーは一応ちょっとソフトかもしれない。
ステフがひどいのは想定内。
面白かったのはトムがルディ、ジュール、ステフという年上三人について「俺は父親をはやくになくして家を出たから、そういう、父親がわりとまでは言わないけど、年上の…尊敬できる、導いてくれる人が必要だったんだ。」「ルディが辞めるって言った時は丸二日ずっと泣いてた。見捨てられたって感じ…子供が父親が仕事でいなくなっちゃうとか、彼女に捨てられる時の感じだったんだ。」
ジュールは確かにおとうさんぽいけどね、ルディはそんなに年上じゃないし、ステフなんか2歳しか違わないじゃない…
ステフは今までにも言ってた通り「僕とルディで、どっちが先にやめるか我慢競争みたいになってた」さらっ。
「トミーとバンドの他の四人は別のこと感じてたよ」さらっ。
「Suds& Sodaの(ライブシーンの)映像はStudio Brusselsで撮影したんだけど、みんな面白いことやって、って感じで。トミーが僕の手を握ったのは嬉しかったよ。親友だって思ってたし。彼の方は映像効果のこと考えてたんだろうけど」さらっ。
Islandの人が登場してるけど「Worst Case Scenarioは全世界で1000万枚売りたいと思った」と…
……
可能性としてはゼロではなかったよね!94年だったし!
Islandについてはトムが「Geffenの方が契約の条件は良かったんだ。でもIslandにした。スタッフも歴史も素晴らしいし、その時契約してたアーティストも。My Bloody Valentine、Tom Waits!ロゴとかオフィスの雰囲気も含めて、全部他よりよかったんだ」と。
実際Islandの人の熱心さは素晴らしかった。Girls Against Boysのライブで前座をやったdEUSを、遅刻して見逃したあと、会場で売っていたZeaを買って家に帰って聞いて一瞬でフォーリンラブ。まだレコード業界が正常に機能していたころの懐かしい話ですね…になってしまうけどね。今となっては。
トムがちょ、俺ロックスターwwってなったのは、ロンドンのForumでPulpがやってたパーティでジザメリのリード兄に「ヘーイ、トム!おれお前のバンドすげえ気に入ってるぜ!コカインどうだ?!」と声かけられた時だそうw
それはシュールだなwww なんかもう94年とかのジザメリって想像出来るけどしたくない感の…
dEUSは(トムは70年代生まれだし)グランジ生き残り世代ではないんだけど、やっぱりWorst Case Scenarioの話になるとその頃のエピソードが多い。
カート・コバーンの死を知ったのはどこかでライブをやってた日だったそうだけど、そういう時代感で考えると、Worst Case Scenarioは今でも多くの人に「うわっ、なにこれ?!こんなの初めて聞いた!どうなってるの?!」という印象を与えるのが全然変わってない。要するに、衝撃は与えたけどフォロワーはいなかったww
しかも自分たちですら全くフォローしなかった。トムがエクストラのなかで「あんまり一枚目を絶賛されると、二枚目も同じようなのを作らなくちゃと思いがちだけど、その罠にははまらないぜ」みたいなことを言ってた。
絶対に二度とは作られない、本当にオリジナルであるまま永遠に残るアルバム。
リマスタ(もともとの超ローファイ感を尊重するためか「gently remastered」となってる)されたアルバム本体も改めて聞いたけど、伝説にするだけの価値はある。
DVDはその他ライブ映像もいっぱい入ってて楽しい!Pinkpopの映像とか気が狂ってるとしか思えないw
MTV Most Wantedの映像とかはブートで飽きるほどみたけどやっぱりいいね。これがMTVで流れてた時代もあった、と今になっては思うしかないけど。
MTVの今の自己中毒っぷりは見ていて痛々しい。
先日Massive AttackのHeligolandについて、もう全然新しくは聞こえないと書いたけど、笑うしかないのはdEUSのWorst Case Scenarioはまだまだ、15年後の今聞いても、全然新しく、消費されてない状態のままだってことか。
売れないよりは売れて陳腐になったほうがまだいい、ってことはたまに聞くけどdEUSは要するに売れなかった。
でもそのお陰で今でもバンドが続いていて(ほぼトム一人の努力の結果だけど)、こうしてリイシューも出るんだと思うと、当時dEUSを売り切らなかった音楽業界ありがとう、と思う。Islandの人が目指した1000万枚が半分でも本当になってたら、今ごろ誰も憶えてなかったかもしれない。。。
DVDにSnow patrolのゲイリー・ライトボディが、フェスのバックステージでトムがアコギぽろぽろやってんのにあわせてHotelloungeを歌ってる映像が入ってたけど、ものすごく全力で歌ってて、結果としてトムのオリジナルよりも全然上手くて素晴らしくwww 彼はデウスのファンなので、トムがギターとコラースしてくれてる横で自分が歌うっていうのは多分嬉しいんだろうけど、嬉しそうを通りこして何だか必死な感じだった。今やUKを代表するバンドのフロントマンで、トムとは別に年齢もキャリアもそう変わらないんだけど。でも彼自身がスノウパトロールの曲(=UKカラオケ定番)を色んな人に歌われるのを聞いてきてるので、曲に対するリスペクトの必要性というのをよくわかってるのかもだ。
私はスノパトが全然好きじゃないしあれほど退屈なバンドもないと思ってるけど(デウスのファンとして一応好意的に見ようとしてもそう思うのでもうどうしようもない)、彼の歌うHotelloungeは素晴らしかった。
dEUSは本当に特別なバンド。99.9%のバンドは、良い悪いは別にして聞こうが聞くまいが物事変わらないけど、デウスは音楽を変えるバンド。
Worst Case Scenarioは、私にとってはそれでもdEUSのアルバムの中では2か3番目の位置づけ(No.1はIn A Bar Under the Sea)だけど、本当に何度聞いても、いつ聞いても、これほどの物を与えられてじゃあどうしたらいいの、という感じになる最高さ。
let's get lostとかの素晴らしさやhotelloungeの魅力は、なんかもうたまに困る。