やっと読み終わった…。。英語の台詞ちゃんと読むの時間かかりますね。。思った以上に。
というわけで先週からずっとThe Authorityのシリーズを読んでいます。
DCの系列のWildStormというレーベルから出てるスーパーヒーローシリーズ。
主人公チームは壊滅した国連管理の超人部隊の生き残りが中心という設定で始まり、いかなる既存権力の干渉も受けない絶対的権威として活動するという趣旨で結成。軌道上に浮かぶ「キャリアー」と呼ばれるオーバーテクノロジーな船を拠点に、異次元からの侵略者、某国の独裁者から合衆国政府まで、あらゆる地球人類の脅威と戦う、という話。
スタメンは百年生きてる女の子、はだしの都市妖精、ナノテク科学者娘、チベットの羽根娘、ジャンキーのシャーマン、マスクにレザーのバットマン風、白いジャンプスーツのソーラーパワー超人。
読んだ結論から言うと世間の評価通り最初のシリーズが一番面白かった。
まあそうでなければ続きが出ない訳で、当然か。
最初の12話はキャラクターを作った人が話を書いているので描写もぶれないし、絵もとても綺麗。いわゆるアメコミっぽい黒の塗りつぶしとビビッドカラーの絵じゃないが。
絵に関しては私はスーパーヒーローもののアメコミはほとんど読んだ事ないので比較が難しい(ファンタジーやミステリーのグラフィックノベルは結構読んでいる気がしますがメインストリームのスーパーヒーローものは正直X-MENやスポーンが大流行りした時期にチラチラ見た事があるくらい。)。
規模の大きい話が多く、12話の最後の4話は神(創造主)を殺す話という、極まってしまった感じの展開。
制作チームが全交代して始まった2期目は、描写が1期にまして暴力的で、現実の某国や某国を想定した状況の悪役が出てきて(1期もそうだけど)レイプ、大量虐殺など何でもありの非常に現実的な話。
それで、悪の黒幕は合衆国政府、という話をやっている間に、たまたま9.11が起きてしまい、かなりの中断、検閲があったよう。
結局ごたごたしたまま終わり、ミニシリーズを挟んで間を置いてから、リセットした感じの新シリーズが始まったらしい。
その始まった新シリーズでは、チームが合衆国政府を乗っ取って大統領になってしまうという設定なんだけどね。。これは流石に笑った。。
まあ、全体的にはより過激なプロットを求めるあまり転がり落ちてゆく感じなんですが。ただそれでも面白いと言えば面白い。
大体、シリーズ全体の狙いは、文字通りのスーパーヒーローを描写することに過ぎない。どういう存在がスーパーヒーローなのかを描いているだけ。つまり、実際にいてほしいと思うスーパーヒーローは、もちろん異世界からの侵略から地球を守ったりモンスターを退治したりはするが、それと同時に、東南アジアの独裁者を引きずり出して民衆に渡したり、難民を収容したり、合衆国政府やG7を脅迫したり、チベットを解放したり、といったことをする存在だと。
「時代が求めるヒーロー像の再定義」とかそんな感じ。
個別のパーソナリティも、オランダ人でシャーマンの「ドクター」はジャンキーでアムスをうろつくのが趣味、可愛いヒスパニックのナノテク科学者「エンジニア」はスウィンガーでパーティ好き、都市を意のままに操れる「都市の王」ジャックは女好きで口が悪い、など普通に普通以下の描かれ方をしている(特にドクター)
羽根の生えたアジアンな「スウィフト」はフェミニストでベジタリアンでチベット仏教徒、頭に戦闘用コンピュータを埋め込まれた口の悪い黒ずくめマスク男「ミッドナイター」は、太陽のエネルギーでほぼ無敵な筋肉隆々の大男「アポロ」とカップル(シリーズで唯一ロマンティックな関係)、などマイノリティ設定も多い。特にスーパーヒーローがチーム内でゲイカップルなのは、その二人のモデルというかアーキタイプがバットマンとスーパーマンであることが明確な以上、読み手の意識ももうそうなんじゃないかという事を暗にでもない形で描いている気がする。
そもそも「バットマンはゲイ」という話が出たのはもう半世紀前のことで
(参照:http://en.wikipedia.org/wiki/Batman#Homosexual_interpretations)
もう別に「ヒーローがゲイだとなにか都合が悪いか」という議論に移ってもいいだろう、という観点から、ステレオタイプなヒーロー像に近いキャラクターがカップルという設定になったのではないかと、思うのでした。
まあ、話が常に合衆国政府その他をけなす内容なので、保守派の人はそもそも読むに耐えないだろう。と思う。
「正義」という言葉も決して出て来ないし。追い求めているのは「正義」ではなく、「より良い世界」あるいは「少しはマシな世界」ということになっている。「より良い世界(A finer world)」という表現がよく出てくる。The Authorityはあらゆる既存の権威から切り離された自分たちを「より高次の権威」The Higher Authorityと定義し、自分たちが正しいと考えることを実行する、というスタンスで、もちろんできる限り人を救うことを優先するものの、悪人でも決して殺さないといったようなスーパーマン的正義感からは大きく逸れて、必要ならば一般人を巻添えにする判断もためらわない。主人公達は基本的に全員地球人(エイリアンに改造された奴、マッドサイエンティストに改造された奴、不思議な一族の出、世紀の精神の生まれ変わり、など背景は色々)で精神的には常人なので、基本的に善人という前提もないし。
結論としては、現代に普通にスーパーヒーローを定義したらこうなるだろうな、と納得するような作品だった。
ちなみにまだ続いていますが、後になればなるほどくだらなくなるのは仕方ない。DCの傘下でもDCユニバースには属さないからと安心してたらキャプテンアトムとのクロスオーバーがあったりするし(そして大変なことに)。